GRIND (グラインド)

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PITTI UOMO REPORT

主要2ブランドの新作に見た
ストリート×モードMIXの未来

EVENT FASHION 2017.08.15

6月にイタリアのフィレンツェで開催されたメンズファッションのトレードフェア「ピッティ ウオモ」をレポート。今季のピッティのスペシャルコンテンツだったゲスト2ブランドのショーに焦点をあて、2018年春夏の動向を探って見たい。少々気は早いがご一読を。

JWは遊び心あるドレスダウンを、
OWはユースのための紳士服を。

 「ピッティ ウオモ」と聞けばイタリアンクラシックに身を包んだ伊達男たちの祭典というイメージを思い起こすかもしれないが、過去にはヘルムート・ラングやラフ・シモンズ、ゴーシャ・ラブチンスキー、日本勢ではサルバムなど、まさに本誌にも馴染みのある尖ったブランドをその時々で招聘してショーをセッティングし続けてきた一面も持つ。そして今季も相澤陽介氏をディレクターに起用した新生ハンティングワールドのデビューやヨシオクボのピッティ初参戦、それに何よりメンズファッション市場を総括できるほどのブランド数やカテゴリーを一堂に集めている場だけに見所はたくさんあった。その中でも特に印象に残ったのはやはり<ジェイ ダブリュー アンダーソン>と<オフホワイト™>のショーだった。前者は<ロエベ>のクリエイティブ・ディレクターも務めるモードの寵児、ジョナサン・アンダーソンがあえて〝庶民的〞なモチーフ(コカ・コーラのロゴや野球のコレクターズカードのパロディー、ハートマークなど)を使うことでドレスダウンしたコレクションを、後者はヴァージル・アブローのディレクションのもと、高いクオリティーを誇るイタリア国内の生産背景を後ろ盾に、ストリートの代弁者としてユースのためのテーラリングという新たなスタイル提案を発表していた。奇しくも対極の位置からモードとストリートのMIX地点へと遊び心を持ってアプローチしてみせた2ブランド、これが時代の気分と言うべきなのか。そしてグラインドが位置する場所もまた、そこから遠くはないのである。

 

OFF-WHITE™

ストリートのユースのための
テーラリングを作るという挑戦

 

 

 

 

 前シーズンまでの象徴と言うべきデニムアイテムやポップなグラフィックの代わりに、本格的なテーラードスタイル の提案で話題を集めた今回のコレクションについて、ヴァージルは〝ユースのた めのテーラリング〞という印象的な言葉で答えてくれた。「父親から譲り受けるものではなく、自分たちのために作られたテーラードジャケットが必要だったんだ。それがなければユースはいつまでもフーディーとTシャツを着続けなければいけないからね。受け入れられるかどうかは別として、誰かが提案しなくてはいけないと思っていたよ」。かつて1990年代にストリートブランド文化が花開いた頃、その原動力は〝自分たちが着る服は自分たちで作る〞ことだった。ヴァージルもまたこうした DIYマインドの延長線上にいることは確かだが、ミラノの老舗テーラリングカンパニーとの協業や、現代アーティストのジェニー・ホルツァーとのコラボ(彼女は1996年のピッティ ウオモで<ヘルムート・ラング>ともコラボしている)によって、ハイファッションの世界のトーン&マナーもしっかりと抑える戦略的な冷静さも彼は持ち合わせているのだ。さすがは元建築家と言うべきか。彼の提示した〝ユースのためのテーラリング〞が果たして受け入れられるのかどうかは、きっとSNSのタイムラインが教えてくれるのだろう。「今でもNYで<シュプリーム>の行列に並んだり、ナイトクラブで閉店まで遊んでいるよ。そこで出会う子たちの意見をこのハイファッションの世界に届けることが僕のゴールだからね」。どこまでピュアな男なのだ……!

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JW ANDERSON

慣れ親しんだ環境や習慣から
離れることが新しさを生む

 

 

 

 

 <ロエベ>のクリエイティブ・ディレクターとしての活躍や権威あるブリティッシュ・ファッション・アワードの受賞など、ハイファッションの世界において今や不動の地位を確立したジョナサン・アンダーソンによるパーソナルブランドの最新コレクションは、予想外に、そして驚くほど〝リアルクローズ〞だった。スウェット、Tシャツ、チノショーツといったラインナップに加え、ストリートブランドの如きサンプリングネタ(野球のコレクターカードやコカ・コーラの広告をモチーフにするなど。しかも自分の顔を使って!)も披露。会場となったピエトラ邸の荘厳な雰囲気とのギャップに、彼の粋な遊び心を感じずにはいられなかった。「今回のコレクションはここフィレンツェで発表することを前提に作りました。私たちが〝観光客〞であること、そして『眺めのいい部屋』をはじめとするフィレンツェを舞台にした素晴らしい映画のように、この街にシネマティックなアプローチをしてみようと思ったんです」。なるほど、全体に漂うリラックスしたあの雰囲気は、ヨーロッパ有数の人気観光地として知られるあの街にインスパイアされた結果だったのだ。続けて彼はこう語る。「デザイナーという仕事にとって大事なことは、時として慣れ親しんだ環境や習慣から離れて新たな挑戦をすることなのです」。ホームタウンであるロンドンではなくフィレンツェを選び、その環境にあったファッションを創造することで行き着いた究極のリアルクローズ。これを〝普通〞と一言で片付けてしまうのは、あまりにもったいない。

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TEXT_Yohsuke Watanabe

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