GRIND (グラインド)

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SARTORIAL STREET vol.4

テーマ『男のための洋服の基本』with 藤田哲平(sulvam)

FASHION SARTORIAL STREET 2017.01.05

大人のダンディズムを探る当連載。案内するのはユナイテッドアローズ&サンズの名物ディレクター、
小木“Poggy”基史氏。ストリートとサルトリアリズムの両方を追求する小木氏がリコメンドする、
その道のスペシャリストを毎回迎え対談を決行。今回は注目ブランド、サルバムのデザイナー
藤田氏に彼行きつけの居酒屋で”男の洋服”について聞いてきた。

メンズ服の歴史から学ぶ
ルールと革新的なモノづくり

 

小木“Poggy”基史(以下K):「普段から様々なデザイナーの服を着ることは多いのですが、日本の若手デザイナーの服はあまり着る機会がなかったんです。でも藤田さんがサルバムを立ち上げて、ファーストコレクションのダイレクトメールを僕に送ってきてくれたんですよね」。

藤田哲平(以下F):「そうです。ヨウジヤマモトで7年間パタンナーとして働いていたのですが、やっぱり自分でメンズ服をやりたいなと思って。2014年のAWからなので2年前ですね。小木さんは、僕が10代の頃、地元のセレクトショップで販売員をしていた時から見ていた人でした。ブリンブリンな格好をして、スニーカーは革靴のように履くものだとか、そういう提案をしていた人はいなかったし、僕もヒップホップが好きなので、カッケーなと思って見てましたね。なので、展示会をする時は絶対に呼ぼうと思ってダイレクトメールを送ったんです」。

K:「ダイレクトメールで送られてきたルックブックを見たのですが、白と黒を基調としたモードな洋服なのに、ボロボロのVANSを履いていてインディアンジュエリーを合わせていましたね。今だと普通かもしれないけれど、当時は新鮮でした。実際に見に行って見ると、スーツの生地でボンテージパンツを作っていたりして。カルチャーがある上品なアプローチはあまり見たことがないので面白いなと。ファーストコレクションでもブルーハーツを流していましたが、変に格好を付けていなくて好きだなと思いました。こないだの東京コレクションのショーでも、マーシーの曲をかけていましたよね」。

F:「真島さんの“RAW LIFE”というすごく好きなアルバムがあって、その中に“こんなもんじゃない”と“情報時代の野蛮人”っていう曲が入っているのですが、それが今回のシーズンのメインでした。あれ、すごい強い曲じゃないですか。強い曲を使うということは、それ以上のものがないと絶対に負けてしまうので自分の全てをぶつけるつもりで今回はやりました」。

K:「そういう地に足が着いた感じが良いですよね。毎シーズン面白い事をやるブランドはあるのですが、毎回2人で飲みに行く時はここ(居酒屋だいぶつ)ですし、ヴァンズ好きでいつも履いていたり、同じ事を繰り返す強さというのはあると思います。その上でシーズン毎に藤田さんの気分がちゃんと出ていて、見ていて気持ちが良いです」。

F:「常に地に足をつけていたいんですよね。範囲外のことをする必要はないし、自分の範囲内だからやれる訳で無駄に背伸びをすることは嫌なんです。これはヨウジさんに教わったことですが、服にお前のエゴはいらないって言われたんです。自分のエゴを服に落とし込んで押し付けがましいのはダメだと。お客さんがお金を出して買うわけだから責任を取らなくてはいけないんですよね。作った服を着た人がハッピーになったり、デート中とか大切な時間にその人のプラスになれば一番嬉しい。これも教わったことですが、オーギュスト・サンダーが1930年代の人々を撮った写真集があるんです。その頃って現代のメンズ服が完成されたと言われる時代で、ダブルのスーツをバチッと着こなしていたりするザ・ジェントルマンや、ワークウェアを着る作業員とか、いくつも継ぎ接ぎしながら着ていて。それらはデザインではなくて生きるために着ているんです。決して服を撮っている人ではなく、表情や生きる強さを撮っているので、写真集を見返すたびに服ってファッションじゃなくてこういう物でしょって思うんです」。

K:「20年代、30年代の服や着こなしを見るとかなりヒントがありますよね。今、夏にジャケットを着るのって暑いじゃないですか。でもその時代は、エアコンも無いのに白いフランネルの3ピースを着ていたりしているんです。そう考えるとどんなに暑くてもまだいけるなと思ったりします」。

F:「それで真夏のピッティウォモでもジャケットを着ていたんですね」。

K:「やっぱり暑いなって思いますけど、昔を知ることで気合いを入れられるというか。女性には着れないものでもあるので、男として生まれた以上それを楽しむのは良いなとも思いますし、ルールが結構ありますが、ある程度覚えるとそれを崩すのが逆に面白かったりもする」。

F:「楽しいですよね。メンズ服を作る以上、絶対にジャケットは必要だと思っているので毎シーズン必ず作っています。男の正装であり、大事な場所に着ていくものとして絶対に必要なものなので、モードを掲げた以上は正装を作れないとダメだと思っています。今、小木さんが着てくれているデニムのジャケットもそのルールと遊びの中間なんですよ。テーラードをベースにしつつも作りはカジュアルにしているんです。左胸の箱ポケットを下げめにしていて。全体の形と形状は2、30年代のディテールに近かったりするんですが、袖付けだけは適当にしていたり。1着1着色々な意味合いを込めて全部パターンを引いて作っています。男の洋服はルールがあるので、それを破るのならば責任を取らなくてはいけない。それ以上のものを作らなくてはいけないんです」。

 対談の後もメンズ服に対し気持ちの強い男たちの夜は続く。深夜のカラオケでブルーハーツを2人で熱唱した。

 
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藤田氏が行きつけの居酒屋である初台に位置する“居酒屋 だいぶつ”。この店で飲める珍しいメニュー、オロナミンC割りは彼のクリエイションを掻き立てるドリンクとのこと。

 
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サルバムの2017春夏コレクションでも使用されたヴァンズのチェッカーフラッグのスリッポン。

 
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写真上_藤田氏が愛するヒップホップからジャズ、映画のサントラなどのCD。パターンを引いている時は歌のないジャズや、テンションを上げたい時は映画“スカーフェイス”のサントラなどを聴く。
写真下_1920年代、30年代の働く男たちを撮影したオーギュスト・サンダーの写真集。


 
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藤田哲平 

ヨウジヤマモトでパタンナーとして経験を積んだ後、2014年に自身のブランド、サルバムをスタート。わずか3年で海外からも注目を集める新進気鋭のデザイナー。

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小木〝Poggy〟基史 

UNITED ARROWS & SONSのディレクターを務める。ストリートとクラシックに精通した知識と自身のセンスで、世界中のファッションシーンから多大なる注目を集める。

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