GRIND (グラインド)

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Interview with Takahiro Miyashita
about MEN'S COLLECTION 2018-19 AUTUMN / WINTER

「ピッティ・ウオモ」レポート②
<タカヒロミヤシタザソロイスト.>宮下貴裕が語る
メンズ2018AWコレクション

EVENT FASHION INTERVIEW MAGAZINE 2018.04.05

今年1月のピッティ・イマージネ・ウオモ(イタリアのフィレンツェで年2回開催される
メンズファッションのトレードフェア ※以後ピッティ・ウオモと表記)にて実現した
日本を代表する2ブランド、<アンダーカバー>と<タカヒロミヤシタザソロイスト.>による合同ショー。
昨日公開した今回は<アンダーカバー>のデザイナー高橋盾さんに続き、
今回は<タカヒロミヤシタザソロイスト.>を率いる宮下貴裕さんのインタビューをお届けします。
高橋盾さんのインタビュー回はこちらから。→(http://grind-mag.com/pittiuomo_juntakahashi/

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“緊張と不安の中で創造しているので、
襲いかかるそれらと毎日戦っていただけです”

ーーピッティ・ウオモでのショーを終えてみて、そのことを振り返ってみたりしましたか?

 

振り返ってないですね。まったく。とにかく前進するだけです。

 

ーー発表の場がピッティ・ウオモであったことはコレクションに何か影響を与えましたか?

 

いいえ。ただ、「イタリアの人達はどれだけ僕のことを知ってるのかな?」っていう不安はありました。

 

ーー海外でのショーということでは<ナンバーナイン>以来となりますが、今回にかける特別な意気込みなどはありましたか?

 

いつも通りの自分でイタリアに行っただけです。力んでいたっていうわけじゃないけど、かといってリラックスもしていない。いつも緊張と不安の中で創造しているので、襲いかかるそれらと毎日戦っていただけです。

 

ーー今回<アンダーカバー>との合同ショーの話が決まった時はどんな心境でしたか?

 

こういう道を作ってくれた神様に、本当に感謝しないとなって思いました。そしてピッティ・ウオモの関係者にも心から感謝しています。

 

ーー<アンダーカバー>の高橋盾さんに今回の合同ショーについてインタビューした時に、会場となったレオポルダ駅(ピッティ・ウオモが所有する、同展の代名詞と言える特別イベント会場。廃線になった鉄道の列車倉庫を利用している)を選んだのは宮下さんで、その理由は「ストレートの長いランウェイでやりたかったから」と話されていましたが、覚えていますか?

 

覚えています。長い旅の始まりになれば良いなっていうのが頭の中にありました。僕は言葉を紡ぐような仕事をしていないから、言いたいことや伝えたいことは洋服に込めているんです。あの長いストレートでそれを見せたかった。

 

ーーちょうど1年くらい前、盾さんと2人で会場の下見に行かれた時点で『ORDER』と『DISORDER』という言葉は決まっていたんですよね?

 

決めてましたね。

 

ーーどちらが思いついたんですか?

 

どっちに転んでも同じ意味の言葉を探していて、最初、僕が「『DISORDER / NEW ORDER』っていうのはどう?」って提案したんです。2人に共通している言葉かなと思って。そしたら(イタリア滞在の)最後の日に盾くんから「『DISORDER / ORDER』と『ORDER / DISORDER』、どっちにする?」って聞かれました。「”NEW”が取れてる!?」とは思いましたが、別に”NEW”はなくても良いと思ったので、「僕はどっちでも良い。盾くん好きな方どうぞ」って答えました。たとえ『ORDER / DISORDER』の方が僕のタイトルだったとしても内容は一緒だったので。

 

ーー『DISORDER』と聞いた時、Joy Divisionの楽曲を連想してしまったのですが、そこから引用されたんですか?

 

そうですね。Joy Divisionをやろうと思ったわけではないですけど、言葉を借りてきた場所はそこです。Joy Divisionはお互いの共通言語のひとつなので。

 

ーーそこから『NEW ORDER』という言葉に繋がっていったんですね。ちなみに宮下さんはJoy DivisionとNew Orderはどちらが好きなんですか? ※New OrderはJoy Divisionのメンバーが母体となって結成されたロックバンド

 

僕はどちらかというとJoy Division派です。

 

ーー宮下さんと盾さんは、例えばRadioheadとか、同じアーティストを好きでも、好きな曲はそれぞれ違うという話を聞きました。

 

そうですね。それは本当に違う。お互いすごく好きなのに好きな曲が違うっていうことが多いですね。だから2人の関係は本当に『DISORDER / ORDER』なんだと思います。

 

ーーちなみに現地では<アンダーカバー>の服も見られましたか?

 

現地で初めて見ました。盾くんらしくて、他の人には真似できない、あの人にしかできないものですね。

 

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“上澄みだけを表現するのではなく、
沈殿した部分を吐き出したかったんです”

ーー今回<アンダーカバー>は『ORDER / DISORDER』というテーマから『2001年宇宙の旅』へとイメージを膨らませていきましたが、<ソロイスト>もそうしたモチーフはあったんですか?

 

僕はやりたいことをやっただけです。

 

ーー合同ショーのテーマを決めてから、洋服については盾さんとアイディアのすり合わせのようなことはしたんですか?

 

洋服のことは一切話してないです。音楽のことも、このグランドフィナーレの曲(The Andrew Oldham OrchestraによるRolling Stonesのカバー曲「The Last Time」)をふたりで選んだくらいです。

 

ーー今回のコレクションをデザインするにあたって、イメージした全体像ってありますか?

 

これはテーマに合っていることかもしれないですけど、僕は世の中にあるすべての洋服が正しいと思っています。トレンドを完全に無視しているって言われたらそうなのかもしれないですけど、すべてが興味の対象なんです。なんというか、分けたくないんですよね。クラシックだとかベーシックだとか、新しいテクノロジーだとか古いテクノロジーだとか、僕はそれらを全部飲み込んだ方が良いと思っています。どれも否定したくないし、どこかに偏ってしまうのはもったいないと思うんですよね。洋服も呼吸しているのだから……。そして、すべてをかいつまんでいくというか、トッピングできるものはラーメンの全部乗せみたいに全部トッピングしたい。

 

ーー洋服をデザインする時って、社会のニュースやそういったまわりの情報からも何かを感じ取ることはありますか?

 

いざ作業に入って考え始めると誰とも喋りたくないし誰とも会いたくなくなるので、何のニュースも必要ないです。本当は一番欲しがりなんですけどね。

 

ーー今回の合同ショーを現場で見られていたユナイテッドアローズの栗野宏文さんに話を聞いた時に、<コム デ ギャルソン・オム プリュス>が”Protection”というテーマを掲げて行った2010年AWのショーと比較して話されていたのが興味深かったんです。

 

そんなことを言われたら……、嬉しいとしか言いようがないですね。”Protection(保護/防護)”という言葉は、常に僕の身体の中にあって、常に自分をプロテクトしたいと思っています。

 

ーー特に今回はマスクや頭巾だったり2重3重にデザインされたベルトのディテールなどから、外敵の侵入をプロテクトしたいという、そんなムードを感じ取りました。

 

むしろその逆で、自分を防御しつつ、自分の内側をさらけ出せれば良いなと思ったんですよね。上澄みだけを表現するのではなく、沈殿した部分を吐き出したかったんです。

 

ーーそれは自分の中の弱さも含めてですか?

 

すべて吐き出せれば良いと思っています。

 

ーーショーのフィナーレでモデルたちが着ていたポンチョには「The Day The World Went Away(世界が終わった日)」という文字が描かれていました。あれはナイン・インチ・ネイルズの楽曲のタイトルだと思いますが、あの言葉が今回大事なキーワードになっていたんですか?

 

一番最初に浮かんだ言葉があの言葉だったんです。頭の中でフィナーレはもう出来上がっていたんですよね。僕が言いたいのはこの言葉しかなかった。

 

ーー外へ出ろ、立ち去れ、と?

 

あれは終わりではなくて始まりの言葉だと思っています。何かが終われば何か新しいことが始まるし、何か新しいことが始まるっていう時は何かが終わる時かもしれないし、何も終わらないかもしれない。それは僕には分からないけど、『ORDER』と『DISORDER』も、『HELLO』と『GOOD BYE』も同じ意味で、共存しているものだと思うんですよ。人間の表の面と裏の面っていうだけだと思います。その間にあるものを見せてもしょうがないので、上澄みを見せつつ、沈殿した部分や内側をみんなに伝えたいと思っています。大事なのはプリンのカスタードの部分じゃなくてカラメルの部分なので。

 

ーー今回のショーの中で宮下さん自身、特に気に入っているルックはありますか?

 

どれも気に入ってないし、どれも気に入ってるんだと思います。ひとつには選べないですね。ショーに登場してくれた人たちは全部1人の人間なのかもしれない…いや、多分同じ人間なんです。黒も白もオレンジも全部1人の人間が持っている色で、黒と白とかは分かりやすく表と裏だし、その中にはオレンジのような発光したものもあると思うんです。

 

ーーオレンジがキーカラーとして印象的に使用されていましたが、宮下さんはオレンジにどんなイメージを持たれていますか?一般的にはエマージェンシーカラーとも言われる色ですよね。

 

その意味は大きいと思います。「緊急です」「危険です」の色ですね。

 

PITTI-O

““僕が曲を選ぶ時はその人のベストな曲、
1番良い仕事をした曲を選んでいると思います”

ーー今回ショーで使用された音楽はどうやって決められたんですか?

 

オープニングで使ったOneohtrix Point Neverの「Replica」は結構前から決めてたんですけど、その次の曲はずっと悩んでいました。そんな時、偶然出会ったAkira Kosemuraさんの「In the Dark Woods」という曲を聴いて。あれを聴いたとき、もうあれ以外考えられなかったですね。Oneohtrix Point Neverのあの何かが壊れ始めているような曲から、ものすごく未来に向かっているようなAkira Kosemuraさんのあの曲に繋げたら良いかもなと思って。それ以降の曲はもう既に僕が大好きな曲たちでしたね。

 

ーーAkira KosemuraさんのあとにはCigarettes after Sexの「Each Time You Fall In Love」を使用されていましたね。

 

彼らはここ数年夢中になって聞いているバンドです。楽曲もアートワークも、全てにおいて自分たちの表現の仕方が徹底しているんですよね。大メジャーにはならないようなバンドかもしれませんが、どの曲も美しいし、僕のタイプのバンドなんです。

 

ーーその次はNine Inch Nailsの「Leaving Hope」でした。

 

あれはもう、彼(トレント・レズナー)の今までの仕事の中でベストな曲ですよね。おそらくNine Inch Nailsのファンが10人いたら、半分くらいの人がベストの曲に選ぶと思います。僕もベストだと思います。

 

ーーショー本編の最後はSpiritualizedの「Broken Heart」でした。

 

ラストの曲は、この曲以外に考えられませんでしたね。いつもの僕のパターンですけど、ラストにはきちんと「。」をつけられる曲を選びます。情けなくて、綺麗で、タイトルも歌詞も良い。いつも僕が曲を選ぶ時は、その人のベストな曲、1番良い仕事をした曲を選んでいると思います。

 

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“今回が最後かもしれないなといつも思っていますし、
次があれば良いなとも思っています”

ーー盾さんとはショー当日は何か話されたんですか?

 

いいえ、一言もしゃべっていないです。当日は、必要なこと以外は誰ともしゃべらないですね。あれこれシュミレーションするので、人としゃべっている余裕はないんです。

 

ーー今回のショーのスタッフクレジットには、スペシャルサンクスとしてスタイリストの馬場圭介さんの名前が入っていましたが、スタイリングは宮下さん自身がされていましたよね?

 

馬場さんはずっとバックステージにいてくれたんですよ。僕の精神的な支えとして横に立って、時々「落ち着け」って言ってくれました。馬場さんがいてくれなかったらできなかったなと思います。昔もそうだったんですよ、横に強さん(スタイリストの野口強氏)がいてくれて。基本スタイリングとかは全部自分でやってしまうんですけど、本番に向き合うのがあまり得意ではないから、精神的な支えになってもらいました。

 

ーーショーの前に「今回が最後になるかもしれない」って話をされていましたよね。その気持ちはショーを終えた今でも変わりませんか?

 

今回が最後かもしれないなといつも思っていますし、次があれば良いなとも思っています。ファッションショーをやることは、自分の感情を表現するのにベストな手段だと思います。ショーをやれば物語を創れますからね。音楽も鳴り始めるし、呼吸をしてくれる何かが登場してくれるから、洋服も考えやすいんです。

 

ーー高橋盾さんにインタビューした時に、宮下さんのデザイナーとしての魅力を聞いたら、それは洋服創りに対する「突き詰め方」だと話してくれました。その突き詰めるエネルギーはどこから生まれるものなんですか?

 

諦めない性格だし、常に不安と向き合っているからでしょうか……。

 

ーーその不安は洋服を創り続けてる限りなくならないと思いますか?

 

生きている限りじゃないですかね。

 

ーー洋服を創るために生きていると思いますか?

 

これしかやることがないし、これしかやりたいこともないし、多分これをするために生まれてきたんだろうし。これ以外なんの才能もないですからね。かといって洋服創りが得意かっていうと分かんないですけどね。まだ勉強中なんです。

 

ーー宮下さんにも同じ質問をしたいのですが、宮下さんにとって高橋盾さんとはどんなデザイナーですか?

 

太陽ですね。

 

ーーどういう部分を見て太陽だなと思うんですか?

 

すべてです。僕が持っていないすべてを持っていますよ。僕は影で、あの人は光なんです。

 

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今回のコレクションではリカバリーシューズのパイオニア<OOFOS®>のサンダルや、<NEOS>のオーバーシューズ、<Salomon >のトレイルシューズ、アドベンチャーメディカルキット社によるサバイバルのためのエッセンシャルグッズ<SOL>のスリーピングバッグを解体して仕立てた洋服など、他企業に制作を依頼したプロダクトも数多く見受けられた。これらはすべて宮下氏自身の生活とリンクしていて、サンダル×オーバーブーツというスタイリングをはじめ、彼の普段のスタイルがベースとなっているという。

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Photo_KATSUHIDE MORIMOTO(little friends)、GIOVANNI GIANNONI
Text_YOHSUKE WATANABE

INFORMATION

URL_http://the-soloist.net/