GRIND (グラインド)

serch
001912750001

Interview with Jun Takahashi
about MEN'S COLLECTION 2018-19 AUTUMN / WINTER

「ピッティ・ウオモ」レポート①
<アンダーカバー>高橋盾が語る
メンズ2018AWコレクション

EVENT FASHION INTERVIEW 2018.04.04

今年1月のピッティ・イマージネ・ウオモ(イタリアのフィレンツェで年2回開催される
メンズファッションのトレードフェア ※以後ピッティ・ウオモと表記)にて実現した
日本を代表する2ブランド、<アンダーカバー>と<タカヒロミヤシタザソロイスト.>による合同ショー。
後世に語り継がれていくであろう歴史的一夜を、その熱が冷めぬうちに、当事者たちの記憶が薄まらぬうちに
記録しておきたかった。今回は<アンダーカバー>のデザイナー高橋盾さんのインタビューをお届けします。

001860500005

“ウィメンズより楽だったかな。
メンズの服は基本的に自分が
「何を着ようかな?」みたいな
ところが大きいので”

ーーまずは率直にショーを終えてみての感想を聞かせてください。

 

すごく楽しかったです。スッとできたというか。

 

ーー合同ショーということに関して言えば、昨年10月に東京で行った<サカイ>との合同ショーも記憶に新しいのですが、盾さんの中である種の関連性だったり、何か紐づくものはあったんですか?

 

それはないかな。<サカイ>の時は自分から声をかけたことだけど、今回のピッティ・ウオモの場合は宮下と一緒にっていうのが向こう(ピッティ協会)からのオファーだったので。

 

ーー合同ショー自体がピッティ協会側からのオファーだったんですね。

 

宮下とはずっと友達だし、何より尊敬するデザイナーなんで、この話が来た時は「お、これは面白いな」って感じでした。

 

ーー演出に関して言えば、<サカイ>との経験が活かされたと感じますか?

 

<サカイ>とうちの場合はまったく(ブランドとしての)趣旨が違うというか、クリエイションの部分での接点もないし、それにお互いパリで既に見せていたので、内容については打ち合わせもしなかったんです。でも宮下との場合は一緒のテーマを決めたり、会場を一緒に見に行ったりとか、いろんなことを一緒に作業したから、その点はだいぶ違うかもしれない。とは言え(合同ショーに関しては)一回近々でやった分、慣れというか、様子が掴めてるって感じはありましたけどね。でも「<サカイ>とはあれをやったから今回はこうしよう」っていうよりかは、前回を参考にして「あの部分はこうした方が良かったんだな」っていう、勉強したって感じはします。

 

ーーメンズのランウェイを行われるのは9年ぶり2回目ですが、やはりウィメンズのランウェイをやることとの違いは感じましたか?

 

レディースより楽だったかな。メンズの服は基本的に自分が「何を着ようかな?」みたいなところが大きいので。レディースよりももっと力を抜いてやれた感じはありますね。それに今回は服もさらっとしていたというか、ポップで明確だったのでやりやすかったです。

 

ーーショーを作り上げていくという過程は、メンズとレディースの違いはありますか?

 

場合にもよるけど、レディースは演出的でシアトリカルなことをやる場合が多いので、今回のようなメンズとは違いますよね。

 

001860570007

 

“あの映画を観た時に
「今の時代ともリンクしているし、
これは良いな」って感じがしました”

ーー今回の合同ショーについて、宮下さんとはちょうど一年くらい前に2人でフィレンツェの会場に下見に行かれたんですよね?

 

そうです。

 

ーーその時点で今回の合同ショーにおける『ORDER – DISORDER』というテーマは決まっていたんですか?(ちなみに<アンダーカバー>のテーマが『ORDER – DISORDER』で、<ソロイスト>のテーマはその逆の『DISORDER – ORDER』)

 

それは会場を決めた後、帰国する前の日くらいかな、2人で飲みながら「どうしようか」って話して、そこで決めたんです。

 

ーーなぜ『ORDER』と『DISORDER』という言葉をテーマにしようと決めたんですか?

 

秩序があったものが崩れていったりとか、相反するものっていうこの2つのワードが、なんか僕たちっぽいのかなって感じたんです。

 

ーー『ORDER』(秩序)と『DISORDER』(無秩序)という言葉からは、つい今の社会への不満や疑問があるのではと推測してしまうのですが、何か明確なメッセージはあったんですか?

 

特にそれはないです。まあ、そういうものは常にどこかにはあるかもしれないですけど、それをどうこうしようってことでこの言葉に決めたわけじゃないですね。イメージです。

 

ーー今回の<アンダーカバー>のコレクションは、スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』からインスパイアされたデザインも多かったですが、それは『ORDER / DISORDER』というテーマが決まってから膨らませていったイメージだったんですか?

 

うん。テーマを決めてから、いろんなものを見ていたんです。それであの映画を観た時に「今の時代ともリンクしているし、これは良いな」って感じがしました。

 

ーーリンクしていると思った部分とは、例えば機会に支配された世界であるとかですか?

 

そうですね。人間が作り出したものだけど、それに支配されてしまっていたり、秩序があったものがコントロールできなくなっていくような感じとか、今もまさにそういう時代だと思うので。

 

ーー元々スタンリー・キューブリック監督の作品は好きでしたか?

 

うん。好きでしたね。

 

ーー『2001年宇宙の旅』というイメージまで、宮下さんと共有していたんですか?

 

それはまったく何も言ってなかったです。(『2001年宇宙の旅』をモチーフにした服を宮下さんに見せたのは)現地に入ってからでした。

 

ーー今回のコレクションを見て『2001年宇宙の旅』だけでなく、他のSF映画からインスパイアされたような雰囲気も感じたのですが、それはいかがでしょうか?例えば『ストレンジャー・シングス』や『E.T.』とか。

 

もちろん好きですよ。アウトドアだったりアメリカのカジュアルだったり、そういうポップな要素がありますからね。

 

PITTI-G

 

“基本となるようなものを
捻ってみたかったんです”

ーー今回のコレクションをデザインするにあたって、全体の起点となったような服はありましたか?

 

ポップでカジュアルなものからスタートしたいなというのはありました。なるべく分かりやすくというか、(ショールックそのままではなく)バラしてコーディネートしてもカジュアルに着れるような。いわゆるベーシックアイテムというか、トラッドだったりアイビーだったり、自分としてもそういうものが気分でしたから。かと言ってあまりにもベーシック過ぎるアイテムは着ないので、そういった基本となるようなものを捻ってみたかったんです。『2001年宇宙の旅』や『ORDER / DISORDER』というテーマを入れることで、ベーシックアイテムを自分の中で消化させながら作っていきました。

 

ーー発表の場がピッティ・ウオモであったことは、クリエイションに影響しましたか?

 

それはまったく関係ないです。

 

ーー今回の<アンダーカバー>のショーはスカートのルックから始まったのがとても印象的でした。これは何か意図したものがあったんですか?

 

トラッドでベーシックなものということで、ウールのニットは最初に考えてました。そこにうちの要素を加えるとしたら、マキシ丈のプリーツスカートがうちっぽいのかなって。トラッドな素材であえてそういうスタートを作るっていうのは、すごく綺麗なのかなって感じはしました。

 

ーーそう言えばショーで使用していたミニバッグは<ゼプテピ>でしたね。

 

そうそう。領(デザイナーの松倉領氏)はもう何十年も前から友達だから。でも領がああいうのを作ってるのは最近知ったんですよね。友達の誰かが下げてるのを見て「それ良いじゃん」って、色々話を聞いていく内に領が作っていることを知って。実物を見たらすごく良かったし、今回のショーの雰囲気にも合うから使いたいなって。

 

ーー他にもコラボレーションアイテムはあったんですか?

 

結構ありますよ。<イーストパック>とか、イタリアの<アストールフレックス>とか、<コンバース>とか、あとは<アデュー>っていうパリの靴のブランドで、デザイナーの2人ともうちの服を好きでいてくれて、一年くらい前にソニアさん(スタイリストのソニア・パークさん)に紹介してもらった時に「じゃあなんか作ろうよ」って。 ※<コンバース>は日本未発売

 

PITTI-H

 

“俺はなんか、遊びながら
楽しい感じでやれたかな”

ーー合同ショーの会場にレオポルダ駅(ピッティ・ウオモが所有する、同展の代名詞と言える特別イベント会場。廃線になった鉄道の列車倉庫を利用している)を選んだ理由を教えてください。

 

あれは宮下の趣味ですね。長いランウェイでやりたいと言っていたので。うちってストレートの長いランウェイのショーってやったことがなかったんだけど、俺も良いなとは思ったから、「良いんじゃない?」って。

 

ーー現地での準備期間には<ソロイスト>の方の作業を覗いたりもしていたんですか?

 

しょっちゅうしてましたよ。ラックで仕切っていたけどお互い覗いてました。俺はなんか、遊びながら楽しい感じでやれたかな。龍平(俳優の松田龍平氏)とか友達もいっぱい来てたし、馬場さん(スタイリスト馬場圭介氏)もいたし。宮下も「すごい助かった」って言ってたから和んだんじゃないですかね。まあうちはパリ(レディースコレクション)に行ってもあまりピリピリしないけどね。

 

ーーじゃあお互いにライバル意識みたいなのはなかったんですか?

 

まったくないです(笑)。とにかくジョイントのショーが面白くなれば良かった。それが1番重要。

 

ーーショーのBGMは2人別々に選ばれたんですか?

 

そうです。

 

ーー<アンダーカバー>はJoy Divisionの「Atmosphere」からKraftwerkの「Radio Activity」へと繋げていきましたが、特にKraftwerkのあの楽曲にはどうしてもメッセージを受け取ってしまいました。*実際はCosmic Jokersからスタートして、上記2曲の間にKraftwerkのGeiger Counterが入ってました。

 

まあ、放射能についての曲だからね。ちょっとした危機みたいな感じは出したかった。

 

ーー2人で選曲のすり合わせをしたりもしたんですか?「うちはこういうのかけるよ」とか。

 

何曲かはね。去年の年末に「どんな感じ?」みたいなのを話して。まあ宮下は大晦日もうちに来てたんで。「こういう感じでいこうかなとは思ってる」、「ああ、そうなんだ。うちはこうだけど」、「ああ、良いね」みたいな。そういう話。

 

ーー楽曲が被るようなことはなかったんですか?

 

それはないですね。音楽の趣味はちょっと違うんで。

 

PITTI-F

 

“宮下と一緒に過ごせて、
一緒に作業できたっていうのは
一生ものの経験ですね”

ーー合同ショーが終わった後、宮下さんとはどんな話をされたんですか?

 

結構話しましたよ。うちはメンズとしては9年ぶりとは言え、レディースはずっと続けてましたけど、宮下の場合は<ナンバーナイン>以来のブランクがあってのショーなんですごい感慨深そうでした。「本当にやってよかった。できて嬉しい」って言っていて、自分もそう思ったし、それを一緒にできたっていうのはすごい良かった。

 

ーーお互いの作った洋服についても話されましたか?

 

もちろん話しましたよ。

 

ーー今回の<ソロイスト>の洋服を見て、個人的に気になったものとかってありましたか?

 

ジャケットとかコートかな。背裏がフリンジの付いたカシミアストールになっているやつ。サンダルやオーバーシューズとか、フィナーレのルックの素材とかも。とにかく必要以上に細かく作られていて、内側に全部デザインが隠されているみたいなね。本人からは「いつも通りシンプル」って聞いてたけど、全然シンプルじゃないよって(笑)。

 

ーー(笑)。そういう意味では今回の<アンダーカバー>と<ソロイスト>の服作りは、対照的なアプローチだったんですね。

 

そうですね。出発点、デザイン的な捉え方が根本的に違っていました。それも宮下らしいもの作りだなと思ったし、見ていてすごい面白かったです。

 

ーー盾さんから見ても、宮下さんのあの突き詰め方は特別だと思いますか?

 

あの突き詰め方はものすごいと思いますよ。うちだって細部まで作り込んではいるし、今回はなるべくシンプルに要素を省きたかったとはいえ、宮下の詰め方を見だしたら、なんか、あんまりデザインしてないなって感じちゃうほどでした。<ナンバーナイン>の時からそうでしたけど、<ソロイスト>になってディテールの詰め方とか、ものの作り方がどんどんマニアックになってきた気がしますね。服に入っていく感じというか。フェチですよね、洋服の。

 

ーーそうしたフェティッシュなもの作りなのに、結果的には統一感をもって表現できるっていうのはすごいことですね。

 

すごいですよ。あんなことをできる人はいないです。だから今回宮下と一緒に過ごせて、一緒に作業できたっていうのは一生ものの経験ですね。もしかしたら単に合同ショーをやったということ以上に相当でかいんじゃないかな。

 

ーー是非また何年後かに合同ショーで、2人が一緒に作業している姿を見たいです。

 

またピッティ・ウオモで一緒にやれたら面白いね。9年後に。

 

001912750001

undercover0001

undercover0002

undercover0003

undercover0004

undercover0005

undercover0006

undercover0007

undercover0008a

undercover0008b

undercover0009

undercover0010a

undercover0011

undercover0011Bb

undercover0012a

undercover0013

undercover0014a

undercover0014b

undercover0015

undercover0016a

undercover0016Bb

undercover0017

undercover0017Bb

undercover0018

undercover0018b

undercover0019a

undercover0019Bb

undercover0020

undercover0021

undercover0022a

undercover0022b

undercover0023

undercover0024

undercover0024Bb

undercover0025a

undercover0025Bb

undercover0026

undercover0027

undercover0028

undercover0029

undercover0029Bb

undercover0030

undercover0031

undercover0032

undercover0033

undercover0034

undercover0035

undercover0036

undercover0037

undercover0038

undercover0038Bb

undercover0039

undercover0040

undercover0041

undercover0041Bb

undercover0042

undercover0043a

undercover0044

undercover0045

undercover0046

undercover0047a

undercover0048

 

 

 

Photo_KATSUHIDE MORIMOTO(little friends)、GIOVANNI GIANNONI
Text_YOHSUKE WATANABE