GRIND (グラインド)

serch
matthew

"Mace Of Disruption"
A Perspective On American Safety
By Matthew Bajda

スパイク付バットで社会の闇を表現する
異色のアーティストが日本初上陸

ART EVENT INTERVIEW 2017.10.24

2年前のサンクスギビングの朝、サンフランシスコの街中
計44箇所にチェーンで括り付けたスパイク付バットを設置するという
過激なパブリックアートインスタレーションで話題を集めたアーティスト
マシュー・バイダが11月10日(金)から日本初となる個展を開催する。
彼はなぜスパイク付バットを作り、それを街に置き去りにしたのか。
思わずギョッとするドープなモチーフに込められた誠実でシリアスなメッセージ。
ここでお届けする彼のインタビューを読めば
彼の個展をより深く楽しんでもらえるはずだ。

_YT_3267

_YT_3275

_YT_3297

SPECIAL INTERVIEW

バリー・マッギーは僕に
アーティストとしていくつかの
ガイダンスを与えてくれたよ。

 

 

 

 

 

ーー生まれも育ちもサンフランシスコですか?

 

生まれたのはミネソタだけど、すぐにサンフランシスコに引っ越したんだ。それからはずっとサンフランシスコだよ。

ーー今日はあなたの個展をサポートしている「SCOOTERS FOR PEACE」(神奈川県の逗子にあるショップ)を借りての取材ですが、あなたも逗子に滞在しているんですか?

 

いや、茅ヶ崎にある友人の家に滞在しているよ。その友人とは昔僕がバンドをやっていた頃からの付き合いで、日本ツアーを組んでもらったりしていたんだ。

ーーちなみになんというバンドですか?

 

最初は18歳の頃、Portraits Of Pastというバンドでドラムを担当していたよ。高校を卒業して2日後にツアーに出たんだ(笑)。その次はFuneral Dinerというバンドをやっていて、このバンドでは3度来日したかな。東京の下北沢や、東北の方でもライブすることができたよ。

ーーなかなかの日本通ですね。

 

もう6度も来ているからね。

ーー今回日本で行われる個展は、2年前にサンフランシスコの街中で行ったインスタレーション(市内にチェーンで括り付けたスパイク付バットを設置したもの)の延長にあるものだと思いますが、こうしたアート活動をやろうと思ったきっかけは?

 

高校の時に受けた授業がきっかけだね。具体的に言うと”ミーン・ワールド・シンドローム(Mean world syndrome)”という、放送メディアにおける問題について学んだことだよ。これは、ラジオやテレビといった放送メディアの印象操作によって、人々がこの世界は思っている以上に危険なんだと影響されてしまう問題のことを指す言葉で、その話がずっと頭の中に残っていたから、アートによってそのテーマと向き合おうと思ったのさ。アメリカにはそうやって影響されやすい人たちが多くいて、じゃあ実際に街中にスパイク付バットが設置されていたら彼らはどんな反応をするのかを試してみたかったんだ。朝4時からサンフランシスコ市内で設置をはじめて全部で44本、9時半に家に帰ったときにはすでにThe New York Times、Los Angeles Times、U.K.のDaily Mailなんかが取り上げていて世界中でニュースになっていたよ(笑)。

ーースピーディーですね(笑)。警察に逮捕されたりはしなかったんですか?

 

大丈夫だったよ。実はこのインスタレーションを思いついた頃、僕はサンフランシスコにある<RVCA>のストアで働いていたんだけど、ある時そこでアート展を行うことになって、そのキュレーターと話す機会があったんだ。彼は僕に「君もアートショーをやってみたいのか?」と尋ねてきたから「ああ、僕にはアイディアがある」って返して、スパイク付バットを使ったパブリックアートインスタレーションの話をしたんだ。そしたら彼は僕に<RVCA>の顧問弁護士を紹介してくれて、その人に相談したら「やってみたら良いんじゃないか」と言ってくれたんだ。僕がやろうとしていたことは犯罪とアートの境界線として捉えられても不思議ではなかったから細心の注意を払っていたよ。警察にとってみたら前例がないことだったから捕まえられなかったんだろうけどね。一方でメディアは、その犯罪なのかアートなのかっていう部分を面白がって取り上げてくれていたんじゃないかな。

ーー設置した44本のスパイク付バットはその後どうなったんですか?

 

警察に持っていかれたよ(笑)。スパイク付バットはバイクの駐車用ポールや交通標識にチェーンでくくり付けていたんだけど、彼らはそのチェーンを切って持っていったらしい。ああそうだ、サンフランシスコにあるパークライフっていうギャラリーのトイレには1本飾ってあるらしいけどね。

ーー例えば設置したスパイク付バットで誰かが誰かを殴るような、そういった事件は起きなかったんですか?

 

触る者さえいなかったよ(笑)。みんな怖がっていたし、バットに触ってしまったら指紋がついてしまうだろ?何かあったら自分のせいになってしまうと思ったから触らなかったんだろうね。それでもテンダーロインのような、クラック中毒のヤツらがいるエリアには設置はしなかった。

ーーサンクスギビングの朝に実行に移した理由は?

 

街中から人がいなくなるのがわかっていたからね。

ーースパイク付バットというモチーフを選んだ理由は?

 

誰が見たってこれが武器だと認識できると思ったからさ。ナイフやチェーンも武器にはなるけど、そうやって使わない人がほとんどだろ?その点、スパイク付バットはとてもアイコニックなホームメイド・ウェポンだよ。実際に護身用として使われているかと言われればそうではないけどね。

ーーなるほど。てっきりバンド活動の中で実際に使われているのを目撃したことがあったのかなと思っていました(笑)

 

それはないよ(笑)。僕たちのバンドはスクリーモ(ハードコアの1ジャンル)だったからね。そこまでタフガイじゃないさ。

ーー安心しました(笑)。ちなみにこれまでに合計何本くらいスパイク付バットを作ってきましたか?

 

200本以上だよ。ただ、ゴールドにコーティングしたのは3本だけで、あとは木製のものだね。

ーーゴールデンバットがすごい存在感を放っていますが、これはどうやって作っているんですか?

 

僕は元々クラシックカーやローライダーが好きで、カービルダーでもあるんだ。だからこうやってコーティングしたり刻印したりするやり方や、それをできる場所は知っていたんだ。それ以上のことはあまり詳しくは教えられないな(笑)。

ーーゴールデンバットに刻まれた模様は何ですか?

 

これはただのデコレーションだよ。意味はないんだ。これもローライダー文化からの影響だね。

ーー今回日本には何本持ってきたんですか?

 

60本くらいかな。

ーー税関で止められたりしないんですか?

 

スパイクを取った状態で持ち込むからね。なんの問題もないよ。

ーーこのスパイク付バットは販売もするんですか?

 

ああ。木製のものは普通に売ることができるけど、ゴールデンバットはギャラリーを通してもらわないといけないかな。

ーーあなたがアーティストとして生きていく上で、総合的に最も影響を受けたアーティストを教えてください

 

最も好きな芸術家はヒエロニムス・ボスというルネサンス期に活躍した画家だけど、今の僕の活動に繋がる影響という点では、やはりバリー・マッギーかな。

ーー確かにバリーもサンフランシスコを拠点としているアーティストですし、<RVCA>も彼のことをサポートしていますよね。あなた自身もバリーと接点はあるんですか?

 

実は昔からバリーのアシスタントもしているんだ。一番古くからのアシスタントさ。最近は自分の活動が忙しくて手伝えていないけどね。彼は僕にアーティストとしていくつかのガイダンスを与えてくれたよ。

ーーガイダンスとは、具体的にどのようなものですか?

 

同じ内容のアート・インスタレーションを同じ街では絶対にやらない、ということとかね。だから東京でスパイク付バットの展示をするのはこれが最初で最後だよ。

ーーということは今後もスパイク付バットという表現にこだわっていくというわけではなく、モチーフを変えたり、まったく別のアートプロジェクトに挑戦していくということですか?

 

日本でこのアート展をやったあと、おそらくオーストラリアにある<RVCA>のショップとドイツのベルリンで同じ内容の展示をやる予定だけど、スパイク付バットに関してはそれが最後だね。次はまったく違うことをやるつもりさ。それに僕は元々フォトグラファーだから、写真でも何かおもしろいことができたら良いなと思っているよ。

 

 

スクリーンショット 2017-10-24 14.57.40

スクリーンショット 2017-10-24 14.58.04

スクリーンショット 2017-10-24 14.58.35

サンフランシスコの街中にスパイク付バットが設置された朝の実際の写真。この写真もマシュー本人が撮影している。

 

 

_YT_3301

_YT_3304

その時に撮影した写真をまとめたZINE(残念ながら非売品)。この中にはスパイク付バットを設置した全44箇所の場所も記されていた。

 

 

アメリカで行われた展示の時に制作された映像がこちら。
以上、これを見て興味を持った人は是非足を運んで実際にスパイク付バットを持ってみてほしい。
ずっしり重いのだ。

 

 

PHOTO_YOKO TAGAWA(horizont)
TEXT_YOHSUKE WATANABE
SPECIAL THANKS_Noriyuki Ushio(Scooters For Peace) https://www.instagram.com/scootersforpeace/

INFORMATION

Mace Of Disruption:
A Perspective On American Safety
By Matthew Bajda

会期_11月10日〜25日 ※オープニングレセプションは10日19時〜22時
Music act by 222『森 俊二(Natural Calamity, Gabby & Lopez)』
場所_W+K+(東京都目黒区上目黒1-5-8)
URL_https://www.matthewbajda.com/https://www.instagram.com/wktokyogallery/