GRIND (グラインド)

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Exclusive interview with
Tetsuo Otsuka of Cootie

変化を恐れずに時代と向き合う
<クーティ>デザイナー大塚哲生が
今伝えたいこと

FASHION 2017.04.24

カッコいいブランドには、当然カッコいいデザイナーがいて、そこにはカッコいい信念がある。
我々が日頃当たり前のように身につけている洋服は、誰かの頭の中から生まれているのだ。
だからこそデザイナーが語る話は面白いし、それを広く世に伝えたいと思う。
今回登場してくれるのは<クーティ>のデザイナーを務める大塚哲生氏。
誰よりもブランドを想い、洋服に向き合ってきた男の言葉をじっくりと読んでほしい。

interview with Tetsuo Otsuka

 

 

<クーティ>と言えばバイク、タトゥ、ワークなど、アメリカンカルチャーから生まれる
男らしいスタイル提案で、日本のストリートシーンに確固たる地位を築いてきたブランド。
2013年には渋谷にフラッグショップ「ラ ルース」をオープンし、日本中に取り扱い店を持つなど、
誰もが認めるトップブランドとして不動の人気を誇っている。
しかしデザイナーの大塚氏はそんな現状に甘んじることなく
昨シーズンから進化/改革へと、ブランドディレクションの舵を大胆に切った。
設立17年目を迎える<クーティ>、その頭脳である彼が今考えることとは?
4月某日、話を聞くために訪れた氏のアトリエには、
オディッシーの「Contradiction’s Maze Ft. Maimouna Youssef」が心地良い音量でかかっていた。

 

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“お金で何でも買える大人より、
無いなりにやっている若い子の方が
見ていて面白いよ”

ーー大塚さんが<バレンシアガ>のキャップを被っているのはなんだか新鮮ですね。

 

俺自身は学生の頃は<ギャルソン>にスケートのアイテムを合わせてたから別に違和感はないんだけどな。自然な流れ。

ーー最近はハイブランドのショップもチェックしていますか?

 

いろいろ見るかな。<グッチ>、<バレンシアガ>とか、セレクトだとやっぱりドーバー(※ドーバー ストリート マーケット銀座)はお店に行くと楽しいよね。

ーー<クーティ>や大塚さんには、やはりヴィンテージの古着を掘っているイメージがありますが、そのあたりは最近どうですか?

 

古着屋も行くけど1990年代のものを見てるくらい。昔みたいにヴィンテージはあんまり見てないね。それよりも新しいものを見に行くね。

ーードーバーと言えば、<ゴーシャ・ラブチンスキー>も好きだとお聞きしました。

 

そうだね。ドーバーで置き始める前から好きで着てたんだよね。

ーー大塚さんが考える<バレンシアガ>や<ゴーシャ・ラブチンスキー>の魅力とはどんな部分ですか?

 

今<バレンシアガ>を良いと思うのって、昔スケートブランドに<ギャルソン>を合わせて着ていた頃の感覚に近い気がする。<ゴーシャ>は新しさかな。それは渋谷とかにいる今の若い子にも同じことを感じていて、単純にイケてるなって思うんだよ。

ーーそれはどういった部分に感じましたか?

 

なんだろう、俺らには無い感覚というか。お金は無いんだろうけど、別にブランドもので固めなくてもイケてるんだよな。(洋服の)合わせ方がうまいというか、独特なんだよ。

ーーそういう感覚の子たちは、例えば10年前の東京にはいなかったんですか?

 

いなかったね。

ーーその独特さとは、どうやって生まれたものだと考えていますか?

 

俺らは90’sのカルチャーをモロに通って来たけど、あの子たちはもちろん通っていなくて、でも通っていないなりの考えがイケてるんだと思う。そこに何かがあるんじゃないかな。あとは大人になるとファッションが決まりすぎるというか、ハマりすぎるというか。お金で何でも買える大人より、無いなりにやっている若い子の方が見ていて面白いよ。全身同じブランドを着てる子なんていないし。

 

“音楽の趣味とかも
スケートビデオからの影響が大きい”

ーー最近はどんなものから洋服作りのインスピレーションを得ていますか?

なんだろう……、スケートビデオかな。(ハイブランドの)コレクションも結構見るし。街に出ればインスピレーションは色々あるよ。

ーー今季の<クーティ>の新作の中で、フレーム(炎)をモチーフにした総柄がとてもアイコニックに感じたんですが、<グッチ>などのハイブランドも炎モチーフを最近よく使ってますよね。写真家のピーター・サザーランドも炎モチーフの作品を発表していたり。そういうムードも感じていたんですか?

いや、普段バイクに乗ってる俺からしたらフレームスって特別なモチーフではないからね。スラッシャーのファイアーフレームロゴもあるし。でももろにバイカーっぽくはしたくなかったから、その落とし込み方が良かったんじゃないかな。

ーーそれが新鮮に感じたのかもしれませんね。

そうだね。フレームスは来季も続けようと思ってるよ。

ーーあとはレターデザインとして使われていた「THRILL CRAZY」という言葉も印象的でした。

あの言葉に元ネタとかはないんだけど、「スリルが味わいたかったら電話してくれ」みたいなフライヤーっぽいデザインにしてみた。

ーー海外のピンクチラシっぽいですよね。

そうそう。だから電話番号もプリントしてるしね。

ーー電話番号をデザイン要素として使っているブランドも最近見かけますよね。

<CALL ME 917>(スケーターのアレックス・オルソンが手掛けているブランド)とかもやってたよね。

ーーアレックス・オルソンとか、<シュプリーム>周辺のスケーターのスタイルとかもチェックしていますか?

うん。『cherry』(2015年に発売された<シュプリーム>初のスケートビデオ)ももちろん見たよ。

ーーちなみに大塚さんはスケートブランドだとどこが好きなんですか?

昔は<ガール>好きだったかな。マイク・キャロルが大好きだったから。

ーー大塚さん1番スケートしていたのは10代の頃ですか?

そうだね。高校とかモード学園に行ってた頃。

ーー大阪だと、スケートしていたのは三角公園とかですか?

いや、梅田とか当時通っていたモード学園の近くにスポットがあったからそこで滑ってて、「eight」っていうスケートショップによく行ってたな。「eight」にはVENICE君(大阪のレジェンドスケーター野上竜也氏の愛称)とかエクスプレッション(大阪のスケートチーム/ブランド)の奴らとか、俺と一緒に<クーティ>を始めた池田圭司っていう、今は<エレメント>っていうスケートブランドにいる奴も、みんなが溜まってた。あの頃はスケートビデオやスラッシャーしか情報がなかったな……。写真集とかはまだ買えなかったから。音楽の趣味とかもスケートビデオからの影響が大きいと思う。

ーースケートビデオのBGMということですか?

そうだね。マーク・ゴンザレスが(BGMに)ジャズ流したり、HIPHOPやメタルもあったりしたから、あれで幅広く聴けるようになったな。今はモリッシーとかフランク・オーシャンとかも聴くし。

ーー2015年にはグレイトフル・デッドの再結成ライブを観るためにアメリカにも行かれていましたよね。

昔から知ってる俺の大阪の先輩にデッドヘッズ(グレイトフル・デッドの熱狂的なファンの相性)みたいな人がいてさ、もうその人の影響でデッドはずっと好きだね。その先輩が日本でのデッドのロイヤルティー(商標権)を持っているから、<クーティ>でも何年か前にデッドとコラボすることができたんだよ。

ーー音楽繋がりで言うと、今季もコラボされていたロバート・クラム(アメリカのカルト漫画家。伝説のコミック雑誌『ZAP』誌を創刊したことでも知られる)もジャニス・ジョプリンのレコードジャケットを手掛けていたりしますよね。

『Cheap Thrills』だよね。クラムは他にもブルースやジャズのレコードジャケットも描いてるんだよ。

ーー『Cheap Thrills』のジャケットにはヘルズ・エンジェルスのマークも入っていて、バイカーの大塚さんとしてはそこも繋がりますね。

今じゃ考えらんないよな。

 

“それでも今これをやらないと
多分この先ないかなと思ったからね”

ーー2017 S/Sのカタログを拝見しましたが、洋服だけを見せるのではなく、スケートボードや自転車やカセットテープなど、よりマインドやカルチャーを伝えようとする気持ちを強く感じました。これは前シーズンから顕著になって来ているように感じたのですが、何か理由があるんですか?

元々スケートブランドから始まったブランドだから、基本(ストリート)を再認識しているって感じかな今は。

ーーそれに合わせて洋服のテイストもユースというかスケーターというか、新たなスタイルに進化して来ているように感じます。

自分の中ではこの感じが自然な流れというか、別に急に関係ないことをやってるわけではないかな。あとはやっぱり、今までやって来たアメカジテイストの様なものがファッション的に面白くなくなったんだよね。

ーーそれはなぜですか?

なんかもう、すごい年代ものの古着を買ってきてそれをサンプリングして(洋服を)作るっていうことが限界なのかなって。日本人がやるとちょっとコスプレっぽくなるしね。ああいうファッションよりもさっき話した今の渋谷の若い子たちの方が東京ストリートというか、リアルなんだよ。

ーー2016 A/Wのカタログで、それまでのシーズンよりもかなり若いモデルを起用していたことにも繋がりますね。そう感じたのが前シーズンからということですか?

いや、もっと前だね。もっと前から変えたかった。だけどお客さんがついて来ないかもっていう心配があったから徐々に(変化)させて来たけど、このままのペースでやっていたら取り残されるなと思ったから、(お客さんが)離れてもいいって気持ちで思い切ってやったんだよ。

ーーかなり大きな判断ですね。

それでも今これをやらないと多分この先ないかなと思ったからね。

ーー<クーティ>がスタートしたのは2000年ですよね?

そう。今年で17年目。

ーー長いですね……。

正直15年が限界だと思ってたよ。

ーー昔と今だと、ファッションは自由になって来たと思いますか?

俺個人としては今の方が自由かな。もの作りが楽しいというか、ちょっと前はやりたいことがやれない窮屈さがあった。

ーーその窮屈さとはどういった部分に感じていたんですか?

ずっと<クーティ>を着てくれているお客さんは本当にありがたいんだけど、ブランドに固執してしまっている人が増えたなっていうのがあって。<クーティ>だから全身買うって言うよりは、例えばさっき話したフレームスでも良いけど、好きだと思ったものをワンポイントで買ってくれるくらいの方がファッションは楽しいと思うんだよね。<クーティ>の洋服を通して、それを伝えていきたいな。

 

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アトリエとはまさしくデザイナーの頭の中。大塚氏のコレクションが所狭しと並んでいる。

 

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雑誌の切り抜きやインスタの画像を使い、シーズン毎にムードボードを作っているという大塚氏。これをスタッフに見せて自身のイメージを伝えているという。見せてもらっているのは2017 S/Sのデザイン時に作ったもの。<クーティ>の洋服作りの源泉だ。

 

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スケートボードは未だに購入し続けているという。

 

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映画にも造詣の深い大塚氏。こちらは事務所内のDVDコレクションだ。

 

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こちらは<クーティ>が過去にグレイトフル・デッドとのコラボで制作したジャケット。

 

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インタビューでも話題に上がったジャニス・ジョプリンのアルバム『Cheap Thrills』のレコードがこちら。ロバート・クラムの作品集も所有している。

 

 

PHOTO_Yuko Saito(horizont)
TEXT_Yohsuke Watanabe

INFORMATION

URL_Cootie